2011年03月 UPDATE

経済センサスから見えてくるもの。

住宅ジャーナリスト・福原正則

このほど初の経済センサスが発表された。それによると、調査が行われた09年7月時点の全国の木造住宅建築工事業(いわゆる工務店)の数は6万7979事業所。01年の調査では9万2586事業所だったから26.6%減。10年に満たない間に4分の1以上の工務店が消えてなくなった。

筆者はこの10年ほど、工務店の行く末について「1/3が無くなり、1/3が工事施工会社になり、残った1/3が従来通りの元請機能を持つ工務店となる」と言っていた。今回の調査結果に当然と思う反面、ちょっと早いのではという衝撃も受けた。皆さんはいかがだろうか。

経済センサスとは耳慣れない言葉だが、これまで事業所・企業統計調査といっていたもの。工務店をはじめとして、大工、設備など専門工事業などの数、企業形態、従業者数などを詳しく知るには欠かせないものだった。経済センサスは、これまで工業、商業、サービス業など分野別に実施されてきた調査を経済センサスとしてまとめ、調査時点もばらばらだったものを同一時点にまとめて網羅的な調査にしたものだ。一昨年7月に初めて実施され、このほどその速報として発表された。今回行われた調査は基礎調査で事業所数などについてだが、来年2月には経済センサス・活動調査として売上高などの把握も行われる。

そこで、この経済センサスを使い、直近の事業所・企業統計調査06年、01年のデータと比較してみた。すると全産業では、事業所数は約600万事業所、従業者数6300万人で、01年に比べ事業所数は4.8%減少し、従業者数は4.6%増加している。これを頭に入れて、我々の建設業や関連産業の数字を見てみる。そうすると、なんと時代の流れや消長が鮮やかに見えてくるのだ。

いくつか驚きの業者減少の数字を拾ってみる。まず公共工事がジリ貧状態のゼネコン。その関係の総合工事業では01年に比べ7.9%減少し約23万事業所。最悪は一般土木建築工事業(いわゆる土建屋さん)で24.4%減少。工務店と同じく1/4が消えた。そのほか鉄骨・鉄筋工事、石工・れんが等工事、左官工事業者が同じく25%前後減少した。しかし工事業者が軒並み減少したのかと言えばそうでもない。

06年の調査では総合工事業からその他の設備工事業まで25業種に分類されているうち、プラスだったのは、建築リフォーム工事業、床工事業などわずか5業種だった。今回の調査では、建築工事業をはじめ専門工事など16業種がプラスになった。2000年以降減少を続けていた建設業分野の各業種だったが、05年の姉歯事件、06年の住宅生活基本法を境目にして、業界の様相が大きく変わった。そのことが工事業界にも相当影響していることが、この数字から見えてくるのだ。元請関係が大きく沈み込み、リフォームを筆頭に、比較的新しい床工事、内装工事、設備、電気通信関係が勢いを増したり、盛り返したりしているのである。建築リフォーム工事業は、まさに時代の風や国の施策の支援を受けて、01年の5000から1万4000とざっと3倍の事業所数になっているのである。

しかし、全く振るわなくなった業種、業界もある。昨年公共建築物等木材利用促進法がスタートしたが、製材、木材加工関連の事業所数の動向を見ると暗い気持ちになってくる。業界では法律の施行で国産材がブームになると意欲満々だが、このセンサスの数字を見る限り、供給は本当に大丈夫なのと心配になってしまうのだ。30年以上前には3万業者いた製材関連であるが、調査の製材業・木製品製造業では今回7821事業所で、01年に比べ32.8%減と、10年足らずの間に1/3が消えた。製材からプレカット加工、合板、造作材、建具などを製造する事業所が木材・木製品製造業という調査の分類であるが、この項目に入る製造業は、その他の家具・装備品製造を除いて殆ど3割前後の減少である。木材加工では、木質系の加工品であれば内装ドアや建材等が殆ど日本から中国、東南アジアに工場がシフトしていたはずであり、こうした現象を示すのも当然だったろう。

木造住宅関連にとって暗いデータばかりでは悔しいから、関連する大幅に伸びた明るいデータもあるので最後に示しておく。01年比で不動産賃貸業32.0%、不動産管理業64.7%増、老人福祉・介護事業225.5%増、これは大東建託の拡大を見ればおのずと理解できる。また01年比で有料老人ホーム80.9%増というものもある。既に福祉・介護分野に進出する業界関係者もいるだろう。

また、今回の経済センサスから各産業、業種の項目に「管理,補助的経済活動を行う事業所」という名称で分類される事業所が見られるようになった。長ったらしい名前の業種だが、よくよく考えてみると身の回りに結構あるのだ。

明日の見えない世界にいる業界だが、こうして10年サイクルのデータを詳しく見てみると、今後の新しい分野が見えてくるかもしれない。

■産業別全事業所数及び男女別従業者数(pdf)