2012年11月 UPDATE

高まる期待感と市場の動き。

住宅ジャーナリスト・福原正則

今年はみんな期待感が高い。昨年末の安倍政権の発足以来、円安、株高で期待感を高めているし、政策でもデフレ脱却・景気回復のための超金融緩和策や大型補正予算や25年度の積極大型施策が目白押しだ。

年の初めの1月は各業界団体の恒例の新年会があちこちで開催されているが、どこも昨年までとは違って雰囲気の明るい会場風景だった。曰く、「消費税増税前の駆け込み需要が期待できる」、「荷動きが活発になってきたし、資材価格も上昇してきた」、「大規模改修が多くなってきた」、「高齢者向けに注目している」など、など。昨年までは、そんなことを言えば、「ムリ、ムリ」、「どこの話」などとけんもほろろの体であったが、皆一様に期待感を示す。

一方国では、こうした市場の反応に対して早くも駆け込み需要の過熱と増税後の冷え込みを心配して、仕事が集中しない様、増税後の優遇税制等の積み増し、延長を決めて対応に出ている。

しかし、消費者側の考えに立つと、家を買うのに今の倍の10%の消費税を払うという現実は、購買意欲をやはり落とすことになるのは間違いない。生前贈与枠の拡大と引き替えに2年後から相続税の大幅な増額が行われる見通しであり、大都市部では対象となる人々がこれまでの4、5倍以上になると言われている。また、インフレ政策であるから、資材価格も上がっていく。また今後、職人不足が恒常化するので、工事価格も人件費の大幅な上昇が予測される。特に職人の工賃は最低でも現在の2倍にしないと、人が集まらない状況になると思う。つまり工事関連の値段がどんどん上がっていくので、どこまで税制優遇等の効果があるかは分らないのだ。

周りを見ると、今家を取得出来る層は親からなにがしかの援助や相続がある人が多い。サラリーマンの平均年収は十数年前には460万円あったが、今では409万円(平成23年)まで落ち込んでいる。年収300万円以下は全体の4割に達しており、住宅の一次取得層の中心であるはずの若い世代に多い。こうした層は税制優遇と言われても、戻ってくるのはわずかだ。優遇を十分受けられない人にキャッシュバックしようという施策もそのためだ。
住宅ローンだって、銀行がいくら金余りの状態になってきたとは言っても、年収の少ない若い人はなかなか借りられない。そして借りられたとしても先々の金利高が待っている。とすると、やっぱり先々の優遇より、今親がかりとなって住宅を買う方が良い。今時持ち家の比率は一般世帯の6割以上であり、少子化の影響を考えると相続する家や財産が少なからずあると言うことであり、増税の行方を考えればやはり駆け込み需要というか、消費者にとってはいまが家の買い時のチャンスであるといえる。

もっとも住宅を軽減税率の対象としてくれるのであれば話は別だが、国も1件当たり数百万円の税金を一度に徴収できる商品であり、年間数十万戸売れるものは捨てがたいはずだ。