2013年04月 UPDATE

アベノミクスと「スマートウェルネス住宅」。

住宅ジャーナリスト・福原正則

絶好調のアベノミックスも、ここのところの円安、株価乱高下で「本当に今後も大丈夫なの」、「中小企業、庶民レベルまで景気が良くなる前に息切れするんじゃないか」などなど、不安や疑問が出てきた。
そんな疑問を払拭しようというわけではないだろうが、このほど規制改革に重点を置いた成長戦略第3弾が発表された。それによると、「国家戦略特区」の創設や薬のインターネット販売の解禁などの目玉施策を上げたほか、10年後には、1人当たり国民総所得(GNI)を150万円以上増やす目標を掲げた。
では住宅産業の状況はどうだろうか。安倍政権では経済の再生に向けて、?大胆な金融政策?機動的な財政政策?民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」を放っているが、その矢はどこまで来ているか。そして住宅産業、我々木造住宅業界の成長戦略は何だろうか。しかし改めてそれを考えると、不安なことばかりが頭をよぎる。
今住宅業界は非常に忙しい。ご存じの通り消費税増税を前にした駆け込み需要だ。しかし、ここに来て足踏み状態が見えるようになってきた。その最大の原因は大工不足、専門職不足だ。そのことは前回のコラムでも指摘した。さらなる不安は少子高齢化だけでなく、総世帯数の減少による市場縮小だ。これも急速に迫ってきている。
今年初めに公表された「日本の世帯数の将来推計」では、6年後の2019年5300万世帯をピークに減少に転じるとしている。そして2035年には4950万世帯まで減るというのだ。国の機関の推計だから結構甘いと思うが、それでもたった15年間くらいで400万世帯が消えてしまう。
これを住宅着工数で考えてみるとどうなるか。日本住宅ストック数は2008年時点で5700万戸。現在は6000万戸前後ではないかと思われる。では今後20年間程度でどれだけ住宅ストックが増えていくのだろうか。
おおざっぱに見当を付けてみる。まず毎年の着工数だが、大手シンクタンクによると2020年までは毎年80万戸程度は家が建つということだから、その数字を採用する。その後は世帯数が減少すると推計されているので、2021年~2035年の15年間は毎年50万戸としてみる(50万戸という数字は、今ある住宅産業としては生き残るための最低ラインと思う)。そうすると2035年時点の住宅ストック数はどうなるか。
2020年までの合計は約400万戸、その後の15年間の合計が750万戸。統計によると毎年の着工数に対して10数%の滅失住宅があるので、それを考慮すると増加する戸数はざっと980万戸、住宅ストックの合計は7000万戸になってしまう。
2035年の世帯数が4950万世帯ということだから、ざっと2000万戸が空き家となる。世界一の空き家大国だ。本当にこんな事態が起きてしまうのだろうか。
国の推計はいつも甘いと批判されているので、事態はもっと深刻なはずである。そう考えると今後の毎年の住宅着工はさらに低めの予測とならざるを得ないはずである。これでは、住宅産業の成長戦略なんか全く描けない、という結論になってしまうだろう。
昨年から国が中古住宅流通やリフォームを叫びだしたのは、こうした背景があるのだ。

では有り余る住宅ストックの活用としての中古住宅流通かリフォームしか生きる道がないのか。最近、国交省でもそのことに気づき始めたようで、新しい市場に向かって動き始めている。
それが「非一般住宅」市場の動きだ。これは筆者が作った言葉なので少し解説すると、「非住宅でなく、一般的な親子や夫婦が暮らす住宅以外の住宅や施設」という意味だ。また「一般的」という意味もここでは日々健全に暮らしているという意味に使っている。
皆さんが一番知っているものでは、最近はやりの「サービス付き高齢者向け住宅」、いわゆる「サ高住」のイメージだろう。これからは持ち家居住高齢単身者の在宅介護サービスとか、地域単位のケアがあるものとか、これまでの介護や福祉施設と違った形の居住施設が市場として大きくなると思われるのだ。
国交省では最近「スマートウェルネス住宅・シティ」ということを盛んに言い出している。その意図とするところは「高齢者が安心して健康で暮らすことが出来る環境整備」だ。

図(添付資料参照)に示されたとおり、超高齢化社会の到来に向かって、今進められている住宅の高性能化、長寿命化、耐震、省エネ、バリアフリー、中古住宅流通・リフォームの活発化などすべてを飲み込んで対応しようという考えだ。
確かに厚労省のデータでも現在、高齢者2910万人うち97%が在宅である。その内506万人が要支援・要介護認定者であり、施設に入っている人はたった17%で残りは在宅のままである。今後高齢化率がさらに高くなるので在宅の要支援・要介護者の比率もアップする。今でも在宅ケアニーズは高いが、一段とその必要性が出てくるわけだ。
 そこに、こうした非一般住宅としての大きな市場が生まれてくると言うわけだ。住宅産業は、そして我々木造住宅業界も、国交省が言う「スマート」かどうかは知らないが、自らの成長戦略の1つとして取り組んで行く必要はありそうだ。

参考資料1:国土交通省「健康長寿社会に向けて」pdf
参考資料2:2010年国勢調査にもどづく世帯類型 xls